権利擁護を考える

4月7日の閣議において、「全世帯を対象とした布製マスクの配布」が決定された。これは、全国で5000万余りの世帯全てを対象に1住所あたり2枚配布する、とされている。(引用:https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2020/20200407_taisaku.pdf、2020-06-12参照)

世帯全てを対象に、と言っているが、1住所当たり2枚の配布では、すべての世帯に配布されることにならない場合があることは、どのように考えられていたのだろうか。
長いこと精神科病院に入院されている方の中には、住所が病院にある方がいる。すなわち、精神科病院に住んでいると言わざるを得ない状態、つまり、不本意ながら病院の中に世帯があるという形をとらされている方がいるのである。今回の布製マスク配布は、日本郵便の全住所配布システムを活用しているとのことだが、この方法だと、先に述べた精神科病院に住所がある方をはじめ、1つの住所に複数世帯の方がいる場合、その方々は後から申し出る形で申請をする必要が出てくることになるのは明らかだ。
「世帯全てを対象に」ということを謳っているのであれば、ぜひ、最初に配るときに、全世帯に届くように丁寧に配っていただきたいと思う。精神科医療福祉の歴史を考えたとき、精神科病院に身を置いている方は地域で生活している方と同じ人間であることを忘れてはならないと思う。その方ご自身の存在が精神科病院の中にしまわれてしまうのではなく、ご自身の存在を他の人や世の中に認識してもらっていると感じられる必要がある。そのような状況をサポートハウスとびらは一つひとつ創り出したいと思った。もちろんこれは、本来はいつどのようなときも誰であってもそうあってよい、そうあるべきものだとも思う。

さらに、精神科病院に住所がなくても、精神科病院に長く入院されている方は、自宅にマスクが届いていても取りに行くことが出来ない方もいる。家族等の面会がなく、マスクを持ってきてもらえない方もいる。
このような事情を日頃から目の当たりにし、国の施策を見ている中で、思うことがたくさんある。
1世帯当たり2枚ずつ配布される布製マスク。一つひとつの世帯が区別されることなく受け取れるということが必要であり、この考えは、私たちが考える、立場や状況や持っている資格、住んでいる場所、性別や年齢、病気の有無等によって分断される文化を変えていくことにもつながっていると思う。1世帯当たり2枚ずつ、どの世帯にも同じように配られてよいものだと考える。

足りなかったら、届かなかったら、申し出てもらうということではなく、一人ひとりの国民誰もが、国からも、他のどの人からも同じように人として認識され、扱われることが今も、そしてこれからもとても大切なことなのではないだろうか。このようなことが、一つ一つ丁寧になされていくことによって、国や、私たちサポートハウスとびらが目指している「地域共生社会」の実現につながっていくのではないだろうか。
「このようなことがあってはならない」、「差別だ」ということも大事だけれども、一人ひとりが自分に何ができるのかを考え、行動することが何よりも大切なのではないだろうか。

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